「掛札悠子」という、伝説(その1)
ツイッターで書くことの予告上げては違うこと書くのが既定路線になっていますが。90年代にひときわ強い光芒を放ってコミュニティから消えた一人の女性のことを。今もって、多くのレズビアンたちがそれとは知らずその影響下にいる。
その人は「掛札悠子(かけふだひろこ)」という筆名で1冊の本を書いた。今もって語りつがれる「『レズビアン』である、ということ」という書籍が92年5月、河出書房新社から出た。マットな質感のシンプルな表紙のハードカバーである。
(帯の推薦文は橋本治氏)
これがどれくらい画期的だったかというと、それまで表に出てくるレズビアンの情報と言えば週刊誌のエロ記事やポルノくらいだった時代の中、フッツーの女性が生硬さも感じられる清潔な口調で自らのセクシュアリティを正面から書いたということにある。もちろんレズビアン当事者の「語り」はずっと前からミニコミなどで存在してたが、メジャーな出版社の書籍として下世話な想像にまみれてない「レズビアンの姿」を読むことができたのは初めてのことだった。
当時、23歳のワタシも一般書店でタイトルが見えないように裏返しにしながら購入した記憶がある。そんで、コミュニティーデビューすぐのころにサインももらった。
(ワタシ、この頃は「つっちー」とは名乗ってなかったんだよね。
てか、見返すとかわいらしい字だな、おい)
掛札伝説は単に「顔のあるレズビアンとして」カムアウトして書籍を出版したにとどまらない。ミニコミ発行、NHK番組への企画出演、フリースペース創設、講演活動と枚挙にいとまがない。いま、掛札さんの名前を検索してもその本人の姿は出てこない。ネット時代以前の活躍ということもあってその活動は急速に忘れさられていっている。伝え聞いた話だと「私がマスコミに顔を出してカムアウトした第一号!」とかふざけたこと言っているレズがいるらしいが飛んでもない話である。足の小指をタンスにぶつけて、スマホを便所に落としたらいいのに!(ささやかな呪い)
掛札さんは無意味に顔を出すのを良しとしなかったし、活動期間も極めて短かったためにお顔を知らない人も多い。手元に昔のチラシからスキャンした顔写真もあるのだけどネットに上げられるのはいやがるだろーなーと思うので、上げるのはやめておきます。
てゆうかさー、記憶の中の掛札さんはずっとアラサーなのに、ワタシはガンガン年取ってシミはできるわ太るわ。活動歴長くてもたいしてリスペクトされないし、いいことないわー。がびーん。
掛札さんの活動については多岐にわたるのでまた今度。こないだ(9/16)のお話がイマイチでしたのでリベンジっぽい感じで。